マランツは、日本のオーディオメーカーの中で
音楽性の表現ができる機材を開発できている数少ない会社の1つです。
私が名指しで(特に低価格帯で)お薦めしてるのがマランツです。
何故そんなことが可能なのか。
その理由がインタビューの中に色濃く出ていたので、
ちょっとご紹介してみたいと思います。
記事の目次
元のインタビュー記事はこちら
Phile-webさんの記事は素直でいいですね。
【開発者に聞く】マランツ「PM-10」は、
“録音現場の音”を目指してスイッチングアンプを選んだ
音決めする上で大事なこと
私は以下の2点が大事だと考えています。
・目先の理論だけで判断していないこと
・聴感での評価水準が高いものであること
これができてないメーカーの機材はほぼ例外なく外れます。
どんなにスペックが良くても外れるというよりは、
スペックが高いほど外れるまであります。
特に国産はその傾向が飛び抜けて強いです。
気になったポイントを抜粋してご紹介します
プリはあえて(電源を)L/R共通とする理由
3ページの中段に掲載されています。
これまでの経験からもプリアンプの電源はL/R共通にして、その分、大型で余裕のある電源を搭載するほうが望ましい結果が得られます。
プリアンプの電源を左右独立にする理由が、あまりないですね。流れる電流が少ないですし、左右で個別のトランスを使うと条件が変わってしまい、L/Rの音の統一感を得ることがかえって難しくなります。プリアンプはむしろ、L/Rで電源の条件が揃うことが重要でしょう。安物を2つ使うくらいなら、良いものを1つ使ったほうがいいです。
私はLRを独立させた時の弊害がもう嫌で嫌で仕方なくて。
左右のスピーカーから出る音がバラバラになって、
全く音楽になっていない機材がいくつあったことか。
コストと手間を掛けてバランスを取ればもちろん独立させた方がよくなりますが、
聴感で判断できる人がやらないとバランスなんて取れないんですから。
音質チューニングの面で、特に苦労した部分
4ページの中段に掲載されています。
試作を進めるある段階で、回路構成はそのままにレイアウトだけ変更を行ったのですが、そこで音ががらりと変わってしまったのです。レイアウトを変えただけで構成要素はほぼ同じなのに、その前段階にあった非常に力強いエネルギー感や鮮烈な音が失われてしまって・・・
レイアウトや構造はもちろん配線まで含めて、頭で理解している以上にこれらが音に影響するということを改めて実感しました。
「仮組みしたものを製品の箱に入れると音が悪くなる」
これをインタビューの記事で何度も見かけるのはマランツだけ。
この「理屈では説明できないものを実感として受け止められる感性」を
持っていないと、音楽性のある製品なんか作れる訳がありません。
スイッチングアンプは、良くも悪くも「色づけがない」
5ページの最上段に掲載されています。
だから、プリアンプなどの性格がより色濃く音に現れます。
これは実際に聴いてみないと分からないというのが正直なところ。
もっと正確に言うと、マランツの機材は私にとって上流の性格が
見えにくくなるブランドなんですよ。
「マランツでも見えにくくなる」と言ったほうがいいのかもしれませんが。
ということは、全部俺色に染めるメーカーの機材なんて
使えやしないというのが正直なところだったりします。
FM Acousticsくらいちゃんと音楽を表現できるのなら、
俺色に染められていてもいいのですが。
このアンプに向いている音源
5ページの最下段に掲載されています。
総じてコンテンポラリーなソフトには向いていると思います。
「コンテンポラリー」なんて言葉を現実世界で使った事がないのですが、
こんな言葉がふとインタビューに出てくるような環境がマランツには
あるということなのでしょうか?
私はバレエのコンテンポラリーしか知りませんでしたよ。
音色が変化してしまうことがいいのか悪いのか
6ページの最上段に掲載されています。
しかしアナログアンプだと、周波数やダイナミックレンジの変化で音色が微妙に変化します。これが心地よさを作り出す要素になる場合もあります。
アンプではないのですが、
「音色が微妙に変化するとはどういうことか」
これについて分かりやすく比較できた試聴会が一度ありまして、
その時は同一マスターから作ったSACDとレコードを
比較試聴させて頂いた時のことでした。
SACDは音場の枠がしっかりできてそこから1ミリもはみ出さないので、
安定しているが故に逸脱もないので面白さが少し足りない感じでした。
一方、レコードは音場の境界線が曖昧で、
それが故に音場を広く感じるとか、
境界線付近で音が揺らぐ様が味になるとか、
その揺らぐ事自体が音色の表現になったりするので、
正確さは低いのですが音楽性は増して聴こえるんですよね。
それをいいと見るか悪いと見るかで評価が分かれるのかなと感じました。
曲によって合う合わないもあるという感じでしたね。
オケだと揺らぐと濁って情報量が減ってしまいますが、
室内楽だと音色がないと面白くないという感じだったため、
私が聴くならレコードの方がいいと思いましたから。
ただし、ノスタルジックな音を否定するつもりはなく、私もそういうものを好む1人です。私も家では、現代の録音を再生するときはB&Wを使いますが、古典録音を楽しむときはタンノイのAutographと真空管アンプですから。
私は自分のシステムで再生できる録音じゃないと聞かなくなるので
難しいところです。
今風の音を再現して琴線に触れるような音をどこかで聞くことができれば
私の方針も変わるかもしれませんが、今のところそんな経験はありません。
そういえば、この前のイベントのレポートで、
60年前のモノラル録音が圧倒的だったって書いたばかりでした。
最近の録音は、聴けば聴くほど失っているものばかり見えるという、
悲しい状況にあると言わざるを得ないと感じています。
もちろん例外はありますけど、あまりにも少なすぎて。
リンク先の少し下、
「今回のイベント最良の音源」というところです。
なんだろ、こういう風に私がツッコミできる事自体が
マランツさんが音楽とちゃんと向き合っている証拠なのだと思います。
もう、オーディオ指標だけのやり取りとか、机上の理論だけのやり取りに
ツッコミを入れるほどの気力も体力もありませんから。
ただ、ちょうど同じタイミングで「ローム」社のインタビュー記事がありまして、
これがあまりに昭和の日本の失敗をなぞっているので、
気が向いたらマランツさんと対比させて記事にしようかなと思っています。
「ローム」社だけのインタビューの時はスルーしたのですが、
同時にマランツさんのインタビューが掲載されていたら、
これはちょっと書かないといけないのかなと。