番組を見ていないので、どうやって紹介されたかは知りませんが、
これでハイレゾを検索する人は増えるでしょう。
メーカーや販売店が話せない内容をまとめておくにはいい機会かなと。
私はオーディオ歴20年程度で、音の認識力は下のような感じ。
・ケーブルの違いが分かる。
・デジタルで音が変わるのが分かる。
・ハイレゾの意義が分かる。
・レコード(アナログ)の意義が分かる。
・ハイレゾでいい音源を探すのにとても苦労している。
オーケストラは生演奏でしか聞かないので、
オケをたくさん聞く方の感覚とはおそらく違うでしょう。
使用しているオーディオ機材は中の下ですが、
音の差の判別力は多分上の下くらいあると思います。
ここではできるだけ客観化した事実を書きます。
メーカーが書いてほしくないことを書きます。
細かく書くと本が1冊書けるので、ざっくり書きます。
ざっくり書いてこの文量ですが。
主観を除外するのは不可能なので、
多少の認識の違いについてはご容赦下さい。
CDより高密度で記録したデジタル音源の総称です。
CDは16bit/44.1KHzというデータ密度で音を記録しています。
一般には24bit/88.2KHz以上のデータを
ハイレゾと思っている方が多いです。
ハイレゾの定義は迷走しているので、
量子化ビット数、サンプリング周波数で
デジタル音声について少し調べてみるといいでしょう。
一言で言うと、音の大きさをデジタル化する細かさを
量子化ビット数で決めて、1秒あたりどのくらいデータを
取るかをサンプリング周波数で決めています。
Victorさんが分かりやすく図で説明しています。
ハイレゾとは | 「VICTOR STUDIO HD-Music.」
データ量としては、(24*88.2)/(16*44.1)=3倍になります。
ハイレゾを紹介しているサイトでは、この数値だけ密度が増えて
音がよくなると書いているサイトがほとんどですが、違います。
情報量は(2^24*88.2)/(2^16*44.1)=512倍になります。
音の大きさを16bitでは2^16=65536段の細かさで記録しますが、
24bitでは2^24=1677万段の細かさで記録します。
このため、情報量としてはびっくりするくらい細かくなります。
Victorさんのサイトはそこら辺を正しく書いています。
デジタル信号を扱う機材はハイレゾに対応している必要がありますが、
アナログ信号を扱う機材のハイレゾ対応は不要です。
よく分かっていない人に買わせる為の方便です。
・デジタル信号を扱う機材
携帯プレイヤー、スマホ、DACなど。
・アナログ信号を扱う機材
アンプ、ヘッドホン、スピーカーなど。
注)内部にDACを搭載しているものはハイレゾに対応している必要があります。
そもそも、ハイレゾとはデジタル信号の定義なので、
アナログにハイレゾもへったくれもありません。
1.ハイレゾ
2.ハイレゾをソフトを使ってCDフォーマットに落としたもの
(Audiogateでも何でもいいです)
この2つを聞き比べするわけですが、普通の人にはかなり難しいです。
ハイレゾの情報量を活かした高密度のオーケストラ音源を、
総額150万くらいの機材で音量を上げて聞くと、多分誰でも分かります。
逆に言うと、このくらいしないと分からないということです。
聞き分けるだけならヘッドホンの方が楽かもしれません。
POPSや編成の小さい室内楽で聞き分けるのは相当大変です。
DSDも高音質デジタル規格です。仕様は長くなるので省略します。
さかんにDSDの方が音がいいと言うメーカーは多いですが、
10年くらい前にDSDは一度PCMに負けています。
未だにDSDをPCMに変換する超高級プレイヤーがあるくらいです。
私が聞くとDSDはDSDの音、PCMはPCMの音がするので、
どちらがいいというより人の好みだと思います。
DSDはデジタルのまま加工できるスタジオが限られている
という問題を抱えているので、
主流になるにはまだまだ時間が掛かると思います。
玉石混淆と言っておきます。
ハイレゾを活かしていると思える音源は全体の2%に満たないです。
音楽製作側の機材と耳がハイレゾの器の大きさに追いついていません。
私は、音楽製作側の機材がよくなる前に、
ハイレゾ音源が売れなくなる気がしています。
ハズレが多い上に無駄に高い。
消費者の足元を見る今の商売では長く続かないでしょう。
気付いた時にはもう全てが遅いと思います。
ハイレゾが高音質にならない理由はいろいろ考えられるのですが、
主に6つを挙げておきます。
・制作費の問題。
・音楽製作側の機材の音が悪い。
・業界の人が、いい音を知らない。
・業界の人で、いい音を世に出そうと考えている人が少ない。
・業界の人が、売れるには悪い音にしないといけないと思っている。
・消費側で、いい音の音源を好まない層がかなり多い。
一番下のだけざっくり書いておこうかな。
音をよくするには音を小さく収録する必要があるのですが、
「音が小さい=音が悪い」と認識している層が凄く多いんです・・・。
「音が大きくならない機材は音が悪い」と思っている方もとても多いので、
そういう人に理解してもらうのが難しいのも事実です。
でも、「この音源は高音質収録しているのでボリュームを大きくして下さい」と
一言書けばいいだけだろと思うのは私だけでしょうか。
これを実践しているレーベルにウッディクリークさんがいますが、
高音質というだけではやっていけないのがこの業界。
気概は素晴らしいのでもっと広まってほしい。
これも主張が入り乱れているので優劣を決めるのは難しいですが、
私がいろいろ聞いて分かったことを書いておきます。
・レコードでいい音を鳴らすには手間とお金が掛かる。
・CDは手軽にそこそこの音が聞けるが、いい音で聞くのはとても大変。
・レコード全盛期のアナログ機材は質がよかった。
・デジタルが主流になって、機材の質は落ちていった。
・ハイレゾ音源でレコードを作ると、ハイレゾと遜色ない音が出る。
ざっくり言うと、レコードはちゃんと鳴らせばハイレゾに匹敵する、
ちゃんと鳴らさないとCDにも負ける、という感じでしょうか。
・ノイズが無く情報量が多く迫力のある音を聞きたければハイレゾを。
・繊細で演奏の表情や音色の豊かな音を聞きたければレコードを。
・レコードはCDに比べて圧倒的に音楽が楽しい。
・レコードと同じくらい楽しいハイレゾ音源を私は見つけられていない。
・オーケストラの情報量を受け止めるにはハイレゾが必要です。
・レコードのよさは圧縮音源でも分かります。
つまり、音楽を楽しく聞くだけなら器がCDくらいでも問題ありません。
CDを作る際、音を編集する段階で台無しにしているのがほとんどです。
ハイレゾは普及させなければいけない技術だと私は思っています。
でも、それには時間が掛かる。制作側も消費側も。
今のように質の悪いハイレゾ音源を乱発していては、
業界が自ら普及する機会を潰しているようなものです。
音と音楽の分かる人に音源を作って頂きたいです。
私が願うのはただそれだけ。
それがどれだけ難しいことなのか、
私は20年のオーディオ歴で思い知ることになりますが。